学園編、完結
『学園ブレイバー』第7話
宿命の二人? 最終バトル
【麻幌さとり】*1
前回の記事のラストで、何か戦うみたいな事を言っていたが。
本気なのか? いや、お互いに既に変身している辺り本気なのだろうな……。
【高座水槌】*2
ま、戦うのは本気だけど本気では戦わないよ、あたしは。
だってあたしが本気出したら多分くーちゃん3秒も持たないし。
【桑林識句】*3
3秒っていうのは軽く扱われ過ぎだと思うけれど、そうね。
一応は戦勝神に繋がる力を持っているあなたと。*4
本来はあくまで「自らを護る力」で変身している私が真っ向勝負したら。
結果は見えているでしょうね。
【水槌】
ふぅん。それがわかった上で挑むんだ。
いいね。じゃあ、試合開始って事で!!
……っと。危ない。
【さとり】
開始と同時に攻撃!?
いや、識句お前ってこんな好戦的だったか?
もっと話し合いで解決するような……。
【識句】
あら? 私は何でも話し合いで解決って程、甘い考えで生きてはいないわ。
【水槌】
でも殴り合いで解決ってタイプでもないよねぇ?
「話し合いをする前に、自分の要求を相手が呑まざるを得ない状態を作って解決」
みたいな感じのタイプっていうか。
【識句】
まあそうでしょうね。でもそれは「相手を敵」と認識した場合の事で。
あなたの事は敵だとは思っていないから。
【水槌】
それはあれかい? 「お前なんて敵にもならない」みたいな挑発?
じゃあ、流石にないよねぇ。
【識句】
あなたの事は単に「わからず屋」だと思っているという事よ。
そしてそういう相手と分かりあうなら、拳で語るって方法もあるわよね。
まあ、現実なら問題だとしてもここは〈物語の世界〉なのだから。
【水槌】
うーん。誘った側のあたしが言うのもなんだけど。
最後は拳でって、普通男子のやる事じゃあ……。
【識句】
そうかしら? さっき郷さんが言ってたわ。
とりあえず男女でわけるのは今時どうなのかって?*5
【さとり】
いや、確かにあいつそんな事言っていたが。
それは今の状況と全く関係ない文脈だったぞ。
――じゃなくて。こいつら話しながら戦っているんだが。
止めた方が良いだろうか?
しかし、私まで変身して加わるとかえって厄介な事になりかねないか。
ならば――
【識句】
そもそも、みーちゃんさん*6には言ったはずなのだけれど。
今の私の郷さんに対する気持ちは「鈍感な相手に対する執着」であって。
相手と付き合いたいみたいな真っ当な恋愛感情とは程遠いって。
【水槌】
そうかなぁ? それは単なる現状維持をしている事への言い訳じゃない?
それに恋愛のきっかけなんてそんな奇麗なものじゃないと思うよ?
【識句】
それをいうならあなたの方こそどうなのかしら?
あなたが郷さんに近づいた理由が利用するためだったからといって。
今の郷さんの気持ちを受け入れない理由にはならないと思うのだけれど。
【水槌】
それはそれだよ。だってあたしのは明らかに――
【識句】
悪いと思っているならむしろ、いつまでも曖昧にしないで。
相手の気持ちと向き合うべきじゃないかしら?
【水槌】
確かにそうかもしれないけど。
それ自分の気持ちに向き合ってないくーちゃんには言われたくないっていうか。
【識句】
私が自分の気持ちに向き合ってないっていうのは。
あくまであなたの勝手な推測でしょう?
【店屋郷】*7
おいおい、二人とも。
気持ちと向き合わないとか言いながら殴り合っているとか、一体何のつもりだよ。
【識句】
郷さん!?
【水槌】
何でここに!?
【さとり】
二人の女が一人の男を取りあっ……いや、譲り合ってか?
兎も角、面倒くさいので男を呼んできたわけだが?
【郷】
はぁ? こいつら恋愛絡みで殴り合いとかしてんの?
ってか男? 誰だよそいつ?
喧嘩の火種なんかになって、迷惑な男だな……ま。
そんな迷惑な男の為に喧嘩するなんて馬鹿な事は――
【識句】【水槌】
五月蠅い!!
【郷】
グエッ!!
【さとり】
お、おい……郷!? 郷!?
大丈夫か? しっかりしろ――
☆ ☆ ☆
【さとり】
なんか、郷のやつ。
お前たちの喧嘩を止めに入ったら、二人同時に殴られた夢を見たとか言っていたぞ。
【水槌】
って、この話夢オチかい!!
【識句】
まあ、実際には夢オチというよりは。
いくらこの〈虚構世界〉が物語の世界だからといって。
登場人物の年齢や立場みたいな設定を無理やりいじったら。
物語の方に無理がきて、夢だったという形に処理してしまう。
――という事なのでしょうけど。
【水槌】
あれかい? この世界の修正力が働いて――みたいな。*8
【さとり】
わかる人にはわかりやすいが、わからない人にはさっぱりな説明だな。それ。
【識句】
きっと、そのうち。
事件の真相を知っている私達さえも、あの一連の出来事は夢だと思ったり。
あるいはすっかり忘れてなかった事になるのでしょうけど――
【水槌】
けど? 何かな?
【識句】
みーちゃんさん。
あなたとの決着はいずれつけさせてもらうわ。
【水槌】
……怖ッ!!
なんでここで何かハッピーな感じの事言って終わらないのさ!?
【識句】
それはそうでしょう。
女の子の恋愛の話が簡単にハッピーエンドになるなんて。
主役である私自身が望んでいないのだから――ね。
(この記事はフィクションであり、店屋郷、高座水槌、桑林識句、麻幌さとり、葉澄蓮は架空の人物です)