この学園編の理由
『学園ブレイバー』第6話
解かれる謎
【桑林識句】*1
前回の記事で私は「この物語の主人公は私で、ジャンルは恋愛もの」
と言ったけれど。
何故そう推測したかといえば――
【高座水槌】*2
ちょっと、屋上に先生呼び出していきなり恋愛ものだとか、何のつもり?
もしかしてあれ? 「実は私、先生の事が」とかそいういう……。
【識句】
先生の冗談は無視して話を進めると。
何故私がそう推測したかといえば、客観的に見ると今の状況で得をするのは。
私の恋愛関係ぐらいだったからよ。
【麻幌さとり】*3
今の状況と言っても、主に「水槌が先生である事」と。
同時に「郷が17歳の高校生である事」というところだろうな、必要なのは。
【識句】
そう。多分、生徒として登場したさとりさんや葉澄さんに関しては。
私と郷さん、そして水槌先生だけだと。
すぐに何が目的か知られてしまうと考えた末のカモフラージュじゃないかしら?
【水槌】
何を言っているのか先生、よくわからないけど。
それだと私だけ先生になっている理由は何かな?
他の人が先生になっていても――
【さとり】
それはシンプルに他の登場人物に自分と対等な発言力を持たせないため。
とかじゃないか?
【識句】
そうでしょうね。
水槌先生以外の先生が何かをし始めたら、話が逸れて厄介だったでしょうし。
ともかく話を戻すと、水槌先生の計画にとって必要だったのは。
「水槌先生と生徒である郷さん、そして私」だったと思うわけ。
【水槌】
…………なるほど。
で、じゃあその状況だとどうしてくーちゃん*4の恋愛が得をするわけ?
【識句】
あなたも知っての通り、郷さんは私について。
未成年で学生だからという理由で恋愛対象から外している節があるわ。
一方、あなたの事は「恋愛感情により利用されていた」と知った上で。
未だに好意を抱いている。
でも――
【さとり】
水槌、お前が教師になり、郷が17歳の高校生になった場合。
郷とお前の恋愛は「生徒と教師」となるから、真面目な郷には障壁になるが。
一方、郷と識句なら「同級生同士」になるから障壁が無くなる。
【識句】
そういう事。
そして水槌先生は前から私の恋愛は応援していて。
一方、自分が郷さんを利用していた事には罪悪感があった。
そう考えると、この学園編の物語は。
郷さんの興味を水槌先生から私へ向かせるためのものだった。
――って考えられるわけ。
【さとり】
ついでに、水槌が未登場ではなく先生役で登場しているのは。
障壁がなくなったからといって、二人を放っておいても特に変化はない。
とでも判断したからじゃないか?
何せ、お前はこんな世界を作り出すようなお節介なやつだ。
万が一を考えて自身が介入しようとしていてもおかしくはない。
【水槌】
ちょ、ちょっと。さっきから聞いていれば。
その条件で得をするのはくーちゃんだってさっき自分で言ったよね?
だったら、この世界を作ったのは実はくーちゃんって可能性もあるでしょ?
【識句】
ええ、私もその可能性は考えてみたわ。
例えば私がこの世界を作った後に、世界を作った記憶を消去したとか。
でも、それだと違和感があるのよ。
【水槌】
違和感?
【識句】
私にとって歳の差とか、幼く扱われるというのは「超えるべき試練」であって。
「物語の世界は何でもありだから、設定をいじって試練を無くす」
なんて手段でそれを解消したりはしないのよね。
【水槌】
うん。まあそうかもしれないけど。
それ、証明できる?
「私ならしません」なんて誰でも言えるじゃん。
【識句】
別に証明する必要はないわ。
ただかわりに。
「そんな手段で恋愛成就させるような女の子を、あなたは応援するのかしら?」
と尋ねればわかると信じているけど。
【水槌】
ふぅん、信じている……か。
なるほど、なるほど。
まあ、信じてくれた者には応えないといけないよねぇ?
一応、こう見えてもあたしも神だし。
【さとり】
まさに「こう見えても」というところだが。それはともかく。
つまり水槌、お前は識句の考えを認めるという事だな?
【水槌】
まあね。認めはするよ。けど――
【識句】
けど?
【水槌】
とりあえずくーちゃんにはその気持ちを力で示してもらおうかな?
つまり、次回はバトルって事で!!
【さとり】
いや、おいちょっと待て。
確かにヒーローものの作品なら「作戦がばれた怪人が襲ってくる」のは普通だが。
何故ここでそうなるんだ!? お前は!?
(この記事はフィクションであり、店屋郷、高座水槌、桑林識句、麻幌さとり、葉澄蓮は架空の人物です)
(第7話はこちら)