『ピンクとグレー』を読む
読書感想第5回目
ヴァニタス……的な美しさ
(この読書感想にはネタバレが含まれます)
【窓井来足】*1
さて、今回の感想は『ピンクとグレー』*2なんだけど。早速本題に入ると。
この小説、個人的にはまず雰囲気が気に入っていて。
【桑林識句】*3
雰囲気ね。確か、この作品の主な舞台は渋谷だったけど。
その街の雰囲気が伝わってくる感じはあったわね。
【窓井】
まあ、実際の渋谷がどうかというのは僕は住んだことはないからわからないけど。
この作品からは「お洒落な街とその路地裏」みたいな二面性を感じるんだよね。
この辺りは芸能界の光と闇というか、人気俳優の抱える心の闇というか。
その辺りにもかかっている感じがあって。
【識句】
ただ、決してそれを二分化はしていないというのもあるわね。
ピンクもグレーも中間色……って、作者本人も文庫版の方のインタビューでいっていたけれど。
【窓井】
うん。僕としても読んでいて、この作品は。
光と闇のうち、どちらかを肯定するわけでも否定するわけでもなく。
その間にあるグラデーションを描いている感じがあって。
そこがカッコいいというか、魅力的に思えるんだよね。
【識句】
そういえば、ピンクとグレーを〈赤と白〉と〈黒と白〉に分けると。
世の中では前者がおめでたい色で、後者が不幸な色として扱われているけど。
その辺りもタイトルには込められているのかしら?
【窓井】
どうだろう。
もしかしたら、その辺りも意識してタイトルはついているのかもしれないけど。
その辺りは気になるところだよね。
【識句】
気になるといえば、各章のタイトルも気になるわよね。
飲み物の名前になっているけれど。
【窓井】
うん。これも何か意味がありそうな気もするよね。
名前に色が入っているものや、アルコールが入っているものとか。
【識句】
あと、甘いかそうでないかとかね。
【窓井】
個人的には第四章だけ「Dr Pepper」とアルファベットなのも気になるかな。
【識句】
で、最後はピンクグレープフルーツになっているけれど。
これを最後に持ってきたのは単に本のタイトルにかかっているからだけなのかしら?
……みたいなことも気になるわね。
話は変わるのだけれど、この作品。
結構、章による場面の切り替えが独特な感じがあるわよね。
作者は映画を意識していたらしいけれど。
【窓井】
うん。そのあたり、僕としても見事だなと思っていて。
前半は、現在と過去を行き来するようにする事で、登場人物の関係に謎を作り。
それによって、読者の興味を作中世界に引き込むようになっていて。
そしてある事件をきっかけに、そこから時間は先に向かって進むようになっているんだけど。
【識句】
けど、そこで登場する作中作の映画は主人公にとっては過去を描いていて。
だから読者も、内容を確認するために前の章を読みたくなったりして。
【窓井】
面白いなと思うのは、映画的な表現方法を小説に入れている事で。
小説でなければできない表現になっている辺りだよね。
例えば「読んでいる最中に前の場面を読み直す」とか。
家庭なら映画でも前のシーンに戻して見る事は可能だけど。
小説の方が手軽にできる訳だし。
【識句】
そうね。あと、他にも。いつの間にか新しい登場人物がいて。
その人がどんな何者かが後でわかるというのも。
映像と文章では違う感じになるでしょうし。
【窓井】
個人的に、こういう他のジャンルの表現方法を理解しているからできる表現っていうのは好きだから。
結構ここも気に入っているんだよね。
それと、気に入っているといえばやっぱり――
【識句】
作中作が物語の重要な位置にあるあたりかしら?
【窓井】
ん? そこが気に入るって、やっぱりわかる?
【識句】
あなたの作っている作品自体、作中作が本編にも関わってくるような内容が多いから、その辺りは予想がつくのだけれど。
この作品、芸能界を舞台にしている事もあって、映画以外にも歌とかダンスとかが重要なポイントになっているわよね。
【窓井】
で、特に作中で重要なポジションにある作品は、テーマに「死」を扱っていて。
そして、この小説自体も死というか滅びの美みたいなものを扱っているけれど。
【識句】
私としてはそこに魅力を感じていて。
死というテーマは作品で扱うには魅力的な反面、定番でもあって失敗すると安っぽくなるのだけれど。
この作品は、作中で死を扱った作品に惹かれる人々と、小説を読んでいる読者の気持ちがリンクするようになっているからかしら?
非常に滑らかに登場人物の死に対して感情移入できる気がするのよね。
【窓井】
うん。僕としてはこの作品の登場人物の死が滑らかに受け入れられるのは。
作品全体に虚栄とか虚無みたいな〈虚〉な要素があって。
だから、なんか「この登場人物たち、消えるように死んでしまうんだろうな」というのを。
その場面が来る前からうすうす感じられるからなんだと思うけど。
【識句】
〈虚〉な要素というのには、最初に話題にした「お洒落な街とその路地裏」も含まれるのかしら?
華やかな街も、その裏にはジメジメして汚れた部分がある……みたいに。
【窓井】
話が一周してきたたので、纏めるとこの小説は。
「華やかなものが、滅びゆく様」みたいな雰囲気が魅力的だったので。
そういう作品が好きな人に是非、読んで欲しいと思っています!!
――さて、このコーナー。
今後もまだまだ町田が登場する作品について感想を書いていこうと思っているので。
よろしくお願いいたします☆
(この記事で窓井と会話している桑林識句は架空の人物ですが、読書の感想については実際に窓井が読んで感じた事を元にしています)
ぼたん園とえびね苑
創作機動部隊 episode.36
市内を散歩する
先日、4月23日に私、窓井来足*1は。
町田市内を散歩してきました。
(鎧堰跡)
(鶴見川)
(野津田神社)
(民権の森、石坂昌孝之墓)
(町田薬師池公園四季彩の社 ぼたん園)
(薬師池公園)
(薬師堂)
(町田薬師池公園四季彩の社 えびね苑)
今回向かった場所としては。薬師池公園の付近で。
主な目的はぼたん園とえびね苑でした。
どちらの公園の花も奇麗で、またぼたん園は牡丹や芍薬の解説が面白く。
えびね苑は園内の森林の空気が良かったのですが。
緊急事態宣言により、どちらの公園も私の行った翌日。
4月24日を最後に今年は閉園となっています。
なので、今回の記事で興味を持った方は、来年以降によろしくお願いします。
*1:まどいきたる。この記事を書いている人であり『創作起動部隊』の物語においてはオルタブレイバーというヒーローとして活動している人でもある。
『創作起動部隊』のストーリーについて
現実の活動と物語が繋がる
ヒーローショーへの繋がりも
さて、前回の記事で。
『超伝神トライブレイバー』と『創作起動部隊』について。
関連はあるが別のものと紹介し。
また、作品内の時系列では。現在公開している小説を始まりとして。
「小説版→創作起動部隊→ヒーローショー→実写版」とも紹介しました。
(前回の記事はこちら)
ので、今回は『創作起動部隊』とヒーローショーについて。
ストーリーを紹介したいと思います。
☆ ☆ ☆
【創作起動部隊・ストーリー】
かつてトライブレイバー達は自分達が住んでいた世界の町田市に現れた〈魔王〉と呼ばれる邪悪な存在を倒した。
だが、その〈魔王〉の残滓は彼らの住むのとは別の世界である、我々の世界*1に逃げ延びていた。
トライブレイバー達は〈魔王〉が復活する事を警戒し、異世界に行こうとしたが、その世界には直に向かう事が出来ない。
その為、彼らは〈キャラクター〉という名前のアバターを作り出し、それを異世界に送り込む。
しかし。精神体である〈キャラクター〉はそのままでは戦う力を持っていなかった。
一方、我々にとっての現実世界。
ここに異世界でのトライブレイバー達の活躍を「作品のイメージ」と受信していた者、窓井来足がいた。
そのイメージをヒーロー作品として制作していたが、イマイチ人気が出ずに悩む窓井。
そんな彼のところに〈キャラクター〉化したトライブレイバーがやってきた。
〈キャラクター〉という精神体であるトライブレイバー達が我々の世界で実体化し、戦う為にはプラスの精神エネルギー、つまり人々の応援が必要。
また元々、異世界で町田のローカルヒーローだったトライブレイバーは人々が町田を想う気持ちも力にする事ができる。
なのでトライブレイバーは窓井に自分達の活躍を元とした作品を制作してもらいつつ、町田市の紹介や市内での清掃活動などをしてくれないかと話を持ち掛けたのだ。
それを受けた窓井は、トライブレイバーと関わるうちに今までぼんやりとしていた「作品のイメージ」がハッキリし始めた事。
そして、自分の作品を売り込むためには地域への貢献も必要だと判断。
自作品の制作の為にトライブレイバーに協力する事にする。
こうして、窓井はヒーロー作品を制作しながら、トライブレイバーの力を自身に憑依させるためにコスプレをしている。
オルタブレイバーというヒーローとして実際に活動することになったのだが……。
【ヒーローショー・ストーリー】
創作起動部隊での活動により、我々の世界で実体化できる程度には力が集まったトライブレイバー達。
だが、彼らはまだ〈魔王〉と戦える程には力を持っていなかった。
その為、彼らは元々いた世界でも町田紹介の為にヒーローショーをしていた事もあり。こちらの世界でもヒーローショーを始め、応援エネルギーを集める事にしたのだが……。
☆ ☆ ☆
2つのストーリーはこのような形になっている為、繋がりのある物語なのですが。
それぞれの作品、あるいはこの後に繋がる(予定)の実写版は。
それ単体でも理解できる内容になるように計画しています。
特にヒーローショーに関しては、イベントなどでたまたま見に来たお客さんも多くなると予想されるので。
事前の知識が無くても楽しめる内容を目指しています。
また『創作起動部隊』に関しては、あくまで作者がヒーロー衣装で活動している事に、物語としての設定を加えたものなので。
『創作起動部隊』を抜いて「小説版→ヒーローショー→実写版」とした場合でも、特に問題なく話は通るように計画しています。*2
――ということで。
今回は『創作起動部隊』とヒーローショーのストーリーについてでした。
今後、再びこの辺りのストーリーについて紹介する事もあると思いますが。
その際はまた、よろしくお願いします!!
『超伝神トライブレイバー』用Twitter開始
そしてオルタブレイバーも活動再開
2つのヒーローの関係は?
先日、Twitterで今までの窓井来足(作者)のアカウントとは別に。
『超伝神トライブレイバー』の活動に絞ったアカウントを制作しました。
また、これにより。作者である窓井のアカウントは。
「窓井来足/オルタブレイバー」という形に変更され。
実在の人物かつ『創作起動部隊』のキャラクターのアカウント。
という形になっています。
(トライブレイバーとオルタブレイバーについてはこちらを参照)
さて、この『創作起動部隊』ですが。この活動、あるいは作品は。
『超伝神トライブレイバー』と関連はあるが別のものとなっていまして。
『トライブレイバー』の物語の一部としてこの『創作起動部隊』を考えた場合。
「小説版→創作起動部隊→ヒーローショー→実写」*1というイメージになるのですが。
仮に『創作起動部隊』の部分を除いて考えても。
「小説版→ヒーローショー→実写」で問題なく、話としては繋がるように計画しています。
また、この『創作起動部隊』はフィクションとしての物語というよりは。
現実的な活動にフィクションとしての設定を当てはめたものに近いため。
現状ではヒーローショーや動画のようなものはあまり計画していません。
が、一応物語や設定は存在しているので。
機会があれば、ショーや動画での活動も計画しています。
では、今後も。
『超伝神トライブレイバー』と『創作起動部隊』をよろしくお願いします。
*1:現状ではショーや実写は存在しないので、あくまでイメージとしてはという話です。また、現在小説で書いている部分は仮に映像作品ならばアニメというイメージになっています。
『ナオミとカナコ』を読む
読書感想第4回目
今回はサスペンス小説
(この読書感想にはネタバレが含まれます)
【窓井来足】*1
さて、今回読んだ作品は『ナオミとカナコ』*2という犯罪サスペンス小説なんだけど。
内容を簡単に説明すると。
夫からDVを受けている女性と、その友人の女性が。
夫を始末する計画を立てて、それを実行に移すが……。
みたいな話で。
個人的にはまず、そもそもこの作品で描かれている恋愛や結婚が気に入っていて。
【桑林識句】*3
「気に入っていて」って。
DVや殺人事件に発展する恋愛や結婚の何処に気に入る要素があるのよ。
【窓井】
ん? まあ、恋愛や結婚の行きつく先なんてロクなものじゃない。
っていうのが、僕の価値観と一致しているからかな?
【識句】
なるほど。そういう意味の気に入っているなのね。
……いえ、それはそれでどうかと思うのだけど。
というか、あなたにとってはキャラクターとは言え。
高校生である私にそんな話する訳?
【窓井】
ん? 高校生ともなれば恋愛なんてドロドロしたものだと思っているだろうし。
まして文学少女なら大体、この世の闇とか理解しているだろうから。
構わないんじゃないか?
【識句】
何か文学少女に対して偏見がある気がするし。
仮にそう思っていてもあまり本人に直接言うべき内容ではないと思うのだけど。
……まあ、いいわ。
話を戻すと、気に入った点の1つはその恋愛や結婚の描写という事でいいのね。
【窓井】
うん。特にこの社会だと結婚後はどうしても男性が有利になるから。
その辺りを問題として書いていた事とかが気にいっていて。
【識句】
男であるあなたが?
【窓井】
まあ、この場合性別の問題というより。
閉じた世界の中では結局、力の強い人が支配者になってしまう。
という事を問題視している辺りに共感していて。
現代社会においては結婚の場合。
その支配者側に男性が回りやすいというだけなんだけど。
【識句】
まあ、その閉じた世界の内部で仮に話し合いをしたとしても。
経済的に、あるいは物理的に力の強い人はいざとなったら。
「話し合いを打ち切る」とか「相手を脅す」という手段を使うことで。
自分の意見を通せるでしょうから。
話し合いで解決というのも、平等公平なやり方にならないでしょうし。
【窓井】
そうそう。
それに立場が弱い側は、強い側の目を気にして行動を制限しないとならないけど。
強い側は、弱い側が我慢している事なんて全く気がつかないし……っと。
いや、まあ勿論。
世の中にはお互いに幸せな恋愛や結婚もあるだろうけど。
僕はそういうの、あんまりわからないし。
【識句】
で、それをテーマとして書いているところが気に入ったというのは分かったけれど。
他に気に入ったところはないのかしら?
【窓井】
勿論、他にも気に入った場所はあって。
いや、むしろこっちの方が他の人からも共感は得られやすそうな部分なんだけど。
【識句】
共感を得られやすそうと思うなら先にそっちを言いなさいよ。
……で、どんなところなの?
【窓井】
いや、一般人が犯罪に手を染めて。
いつバレるのか、あるいはバレたとしてどう逃げるのか。
というあたりの精神面の描写が良かったなと。
【識句】
確かに、その辺りはこの作品の見どころだったわね。
私も最後の最後まで、主人公達の犯行がバレて、捕まるんじゃないかと。
ハラハラしながら読んでいたし。
【窓井】
まあ、この辺りが気に入った理由には。
個人的に、僕があまりこういう「一般人が罪を犯す」という作品を、今まで読んでいなかったからというのがあるのかもしれないけれどね。
同じ「悪事がバレたらどうしよう」という内容でも、明確に悪人が主人公になっている作品……っていうべきかはわからないけど。
兎も角、そういうのとは違うから、そこが面白いっていうのがあって。
【識句】
明確な悪人というのは、例えば主人公が物語に登場した時から泥棒とか、暗殺者みたいな。
そういう設定の作品という事でいいのかしら?
【窓井】
そうそう。そういうのだと最初から主人公は違法な世界で生きているから。
読者も主人公が罪を犯したという事自体はそんなに意識しないんだけど。
この作品は、あくまで一般人が主人公だから「罪を犯した」というのが心理面で非常に大きくて。
【識句】
で、そんな主人公の二人についてだけれど、ラストについてはどう思ったのかしら?
【窓井】
あそこで終わるのは丁度良かったんじゃないかと思うよ。
まあ、勿論バッドエンドの作品として逮捕されたり、あるいは夫の親族に復讐されたりして終了ってのもありだとは思うけど。
そうならずに、一応逃げ切ったような感じで終わっている辺りは上手いなと思ったし。
【識句】
そうね。一方でこの先の二人の未来に不安もまだ残された状態で終わっていて。
「犯罪をしたのにハッピーエンド」みたいな形にもなっていないから。
そういう点でもあのあたりで終わるのは良いのかもしれないわね。
【窓井】
そうそう。バッドエンドにもなっていないけど。
かといってすっきり終わっている訳でもないというのは。
ある意味、あの二人の今後の人生そのものだと思うし。
【識句】
確かに、一生、秘密と不安を抱えて生きていくなら。
すっきりとした幸せを手に入れる事は無さそうよね。
【窓井】
うん。まあこんな感じで。
主人公達に読者が感情移入できる魅力的な小説だったので。
興味がある人は是非読んで欲しい作品でした。
――さて、このコーナー。
今後もまた、町田が登場する作品について感想を書いていこうと思っているので。
その際は、是非、よろしくお願いいたします!!
(この記事で窓井と会話している桑林識句は架空の人物ですが、読書の感想については実際に窓井が読んで感じた事を元にしています)
寺フェスに行く
創作機動部隊 episode.35
今回は一般客として
先日、3月20日、21日。
町田市高ヶ坂にある祥雲寺で開催されていた寺フェスに行ってきました。
(寺フェスについてはこちら)
今回は前回と違い、出店ではなく一般客として行ったのですが。
コスプレの団体の方と知り合った関係で、2日目はヒーロー衣装で参加していました。
また、今回。
他の方のダンスや歌、マジックやジャグリングなどを見て。
やはり自分も何か、人を楽しませる活動がしたいと思ったというのがあって。
現在、その活動の為に準備をしているのですが……。
それはまた次回紹介したいかと思います。
では、今後も創作起動部隊と『超伝神トライブレイバー』をよろしくお願いします☆
『まほろ駅前狂騒曲』を読む
読書感想第3回目
今更ながら……
(この読書感想にはネタバレが含まれます)
【窓井来足】*1
さて、今回は第1回、第2回に続いて『まほろ駅前』シリーズの第3作の。
【桑林識句】*3
なんだけど? って、前もこんなやり取りだったけど。
今度は一体何?
【窓井】
今更だけど、この作品。
町田をモデルにした町が舞台だけど、町田は登場しない作品だよね。
【識句】
本当に今更だけど……。
まあ確かに町田をモデルにした町が舞台とはいえ、この作品に町田は登場していないわね。
それでいて他の地域の名前はそのまま登場しているっていう。
【窓井】
で、そういう作品を町田が舞台の文学作品を読むコーナーで扱っているっていうのも、なんか不思議な感じがするっていうか。
【識句】
とはいえ、文学館が出していたリストでも最初の3冊がこのシリーズだし。
それに、多分町田市が舞台として登場している作品の中で一番有名で、かつ具体的に町田の何処がモデルだとわかる作品を選んだらこれになるんじゃないかしら?
【窓井】
確かにそうなんだけど。
よく考えたら、町田が舞台の作品として一番有名な気もする作品に。
町田は登場していないっていうのは何か面白みがあるなって。
まあ、それはともかく。
【識句】
ともかくなの?
【窓井】
うん。今の話題はあくまで今回がこのシリーズの感想はラストだから一応確認しておきたかっただけだし。
早いところ『駅前狂騒曲』の感想に入らないと、文字数稼ぎだと思われるからね。
【識句】
別に誰もそんなこと疑わないと思うのだけれど。
とはいえ、読者の為にも早く本題に入った方がいいでしょうね。
で、今回の感想はどうなのかしら?
【識句】
そうだね。
個人的には行天と僕の価値観は実に近いと思ったってあたりかな?
【識句】
例えばどのあたりが?
【窓井】
生死観とか、あるいは正気と狂気といったあたりとかだね。
ただ、明確な違いもあるけど。
【識句】
明確な違い?
【窓井】
例えば、行天と僕では命や家族に関するところが真逆というか。
僕の場合、家族は持っても、新しい命を作る事には加担したくないからね。
少なくとも人間やあるいはその程度の思考力を持った存在は生み出したくない。
【識句】
……それはそれで随分と変わっているわね。
【窓井】
そうだろうね。もし僕のような価値観が多数派なら。
とっくの昔に人類は滅んでいるだろうし。
……まあ、それはともかく。
そういう違いはあるけれど。
ただ一方で正気と狂気については大体行天と考えが同じな気がしていて。
【識句】
正気と狂気ねえ。
そもそも今回の作品自体、それがテーマの一つだったんじゃないかしら?
ほら、タイトルにも〈狂〉の字が入っているし。
【窓井】
そんな気もするね。
で、個人的にそのテーマを考えた時に、一番それを表しているのが。
バスジャック老人一行だったんじゃないかって考えていたんだけど。
【識句】
バスジャック老人一行?
【窓井】
うん。どうもこの小説を最初に読んだ時。
あの一団だけ、今までの作品の雰囲気と浮いている感じがあって。
だから逆に、この一団がこの小説のテーマの鍵なんじゃないかって。
【識句】
他の集団ではなくて?
【窓井】
いや、他の集団も比較対象として必要なんだけど。
何故他の集団、例えば星の一味やHHFAに比べて。
バスジャック老人一行が異質に見えるかって事が鍵っていうか。
【識句】
何故ってそれは……あたらめて考えたら。
他の集団は「裏社会の人」とか「カルト教団の残党」とか。
明らかに世間と違う集団……あ、なるほど。
【窓井】
何かわかった?
【識句】
私たちは普段、異常なものっていうと。
「自分達とは別のもの」と錯覚して生きていて。
星の一味やHHFAにはそれぞれ。
その「別のもの」としてのレッテルが張られているけれど。
バスジャック老人一行は特にそういう説明はなく。
日常の延長として奇行に走っている感じよね?
【窓井】
そうそう、そんな感じに考えた訳。
で、ここに「傍から見れば異常な集団も、内部の人にとっては正常」。
っていう視点が入るんだけど。
大抵の読者は裏社会の人やカルト教団には「自分達とは別」という先入観があるから。
彼らの行動を見ても「正気のまま異常な事をする」というのが感覚的には掴みにくい訳で。
【識句】
一方、バスジャック老人一行は日常と異常の間の集団だから――
【窓井】
うん。正気のまま異常な事をする事の危なさが伝わるっていうか。
まあ、少なくとも「自分達と同じような人達なのに何故」という感じは受けるでしょ?
【識句】
で、その「自分達と同じような人達なのに何故」という感覚が。
最初に言っていた彼らだけ今までの作品の雰囲気と浮いているって感覚になるのね。
【窓井】
だろうね。まあ、だから。
あの集団に僕が感じた違和感は、おそらくは作者が意図したもので。
そしてそれは行天の言っている。
「常に自分の正気を疑う」を描くためのものだったんじゃないか。
――っていうのが僕の感想なんだけど。どうだろう?
【識句】
どうだろうと言われても、感想は人それぞれだからそういう解釈もあるでしょう。
としか言えないのだけれど。一つ言うなら。
【窓井】
言うなら?
【識句】
この作品の主人公、多田についてはどうなのかしら?
彼について、今回の感想では全く触れていないのだけれど。
【窓井】
え? そこなの?
……どうって言われてもな。多田は僕と違って、まだ常識人の方だし。
あ、でも彼の言っている事で強く共感できるものもあったな。
【識句】
それは何かしら?
【窓井】
親も一人の人間だから、子供の為に全て犠牲にするのは良くないっていうような話。
正直、親に犠牲になれた子供側からしたら同意せざるを得ないんだよね、これ。
【識句】
なるほど、その部分ね。
まあ、この部分に関しては私も考えるところがあるのだけれど*4……そうね。
一概に、子供の為に犠牲になったから良い親とも言えないでしょうね。
【窓井】
うん。だろうね。
で、この辺りの親子観っていうのも。
僕がこの作品、あるいはこのシリーズが好きな理由なんだけど……。
まあ、これ以上書くと記事が長くなり過ぎるから今回はここまでとして。
こうして3回に渡って感想を描いた『まほろ駅前』シリーズですが。
個人的にはとても気に入っている作品なので是非、このブログを読んでいる人には実際に読んでもらいたいなぁ……と。
【識句】
気に入っている作品と言いつつ。
まだあなた、この作品のドラマ版も映画版も見ていないわよね?
【窓井】
そ、それについてはまたいずれ見ますので。
よろしくお願いします。
そして、この「町田が登場する文学作品を読むコーナー」は次回。
『ナオミとカナコ』*5の感想になる予定です。
そちらの方の感想もまた、よろしくお願いします☆
(この記事で窓井と会話している桑林識句は架空の人物ですが、読書の感想については実際に窓井が読んで感じた事を元にしています)